2013年03月19日

知床自然大学院大学は

*はじめに、このページを一時、非公開とさせていただいておりました。
その間に、どうして?と言う問い合わせをいただきました。また、たくさんの方がこのページへアクセスして下さっていました。申し訳ありませんでした。
このページの内容に、説明が不十分だったり、表現に曖昧な部分があり、誤解を招いてしまうという指摘もあり、訂正加筆をしようと思い、一時クローズとしていました。
で、その間、忙しくなりなかなか訂正する時間がなく、3日間ほど非公開になっていたことお詫びします。
今日は、洗濯も終わり、時間ができましたので、やっと書くことができました。(2013年3月27日水曜日 11:00)

3月6日から開催されていた斜里町の3月議会は昨日、18日に終わりました。
審議の日、あるいは一般質問の日も、そして昨日の総括質疑と予算議決の日も、時間の延長があり、いつも思うのですが、なかなかタイトでハードなスケジュールでした。

これまでも、何度かこのブログや私の議会レポートの中でも書いていますが、斜里町の議会はよく言われる、どこぞの委員会や会派で大方の質疑がされて、本会議では採決が主という方法ではなく、かなり多種にわたる質疑が本会議の場でくり返されます。
どこでも、この方法を・・とは思えませんし、言えませんが、斜里町ではこうした質疑などはオープンで行われて、良いことだと私は思っています。町の姿勢、議会の雰囲気、議員の姿勢が良くわかります。

ですから、議会は何をやっているのかわからない・・とおっしゃる方は、議員各位の活動と取り組みは別として、議会としてやっていることはしっかり見てほしい、議会だよりは読んで欲しいと思います。

で、今議会では知床自然大学院大学(以下、自然大学)についていくつかの質疑がありました。
この質疑は、議員個人の一般質問で行われたもの。
それから、25年度の予算質疑の中で関連してくる項目の中で質問するもので、町とそれを質問した人のやり取りとなります。
自然大学について、町が説明をしてその内容について全員で協議するようなものではありませんでした。
ですから、大方の意見は、先日から何度か新聞に発表されたことをベースに質疑がされていました。

大別すると
・自然大学を町でも取り組むべきだ
・町が主体にならないでも協力すべきだ
・大学自体の方法を町が指導的に持って行くべきだ
などの意見が出されていました。


斜里町の答えは、こうした自然大学の考えを最初にどうだろう?と設立したい方から言われたときに、現実的な資金の問題など充分に考慮してもう少し時間をかけて構想を練って、やっていくべきではないか、と返答していたこと。しかし、結果的には財団を設立して動き出した、と言うこと。であれば、町として主体となって動くことはできないし、私学として設立する旨になんら言える立場ではないこと。
斜里町としてのお墨付きを求められても、町としての責任を無視することはできない。そして、取り組むべき優先課題が他にもたくさんある、と言う(他にもたくさんありましたが)考えでした。

そもそも、町で作った第3次総合計画(27年前、現在は第5次計画で動いています。)に載っていた構想で、その後、第4次、第5次とつながってきています。
昨年、自然大学構想について協議された内容の報告と提言を斜里町は受けています。(2012年2月)そのことについて、議会でこの構想についてどう対応していくのか?と言う質問を受けたときに、町長はこの構想に町が取り組んで行くことは現実的には難しい、と言っていました。
この大学構想(案)については今回の議会後半で配布されました。

私は、今回の質疑のやり取りを聞いて、
総合計画に乗っていたから・・、町が責任を持って関わるべきだと言う意見には、納得はできません。
また、町の人(地元)が大学を作ると言っているのだから協力をしてやるべきだ、と言うことについても、実際にできてからなら、何かしら考えられるでしょうが、現時点でどんなものなのか?と言う情報がない中で協力はできないと思いますし、すべきではありません。
大学を作るって、お店を開店しようとか、工場を作ろうと言うものとは、かなり違うと思います。
ですから、今回の町の答弁には納得できます。
議場外の場で、「せっかくやろうと言っているのに冷たい」とか「一緒に名前を連ねるだけでも良いのに」という声を聞きましたが、そんな無責任なことで、斜里町が動くべきではないと私は、思っています。
斜里町が一つの会社で、町長が社長なら・・社員の不安や役員会をも説得して加わることに問題はないと思いますが・・斜里町は町。自治体であり、町民の町です。

今回のやり取りは、この自然大学構想の中身について問われた場ではありませんでした。あくまでも、新聞などの報道に対して書かれていた町の対応を問うたものです。
そして、町は「優先課題として取り組むべきことは他にある」と回答したことに私は、その通りだと思っています。

今回の議会でのやり取りを聞いて、私は議場で意見は述べていません。
でも、今回の自然大学構想について思ってたことを少し、ここに書きます。

知床100u運動は現在も続いています。これまでのように寄付を募って寄付してくださった意志を原点として活動しています。
最近は一年間の寄付額は1000万円前後です。それでも、これからもずっとこの事業を続けて行かなくてはなりません。
大学は人を育てる場です。大きな責任があります。しかも、そのための資金を寄付でやっていく(新聞に書いてあった)という考えに、私は疑問を持っています。

私は、この知床自然大学院大学の設立には反対です。知床で、自然に関わる専門性を高めていくために新たに設立される大学院で学ぶ、という必要性を感じていません。何故なら、これまでも、多くの人がこの知床に関わりを持ち、活動してきた人たちが、現在も各地でその専門性をしっかりと活かして活動しています。
大学院で学んだからと言って、それが自然に関わる部分で活かされるだろうか?2年間の中で学ぶ専門的な知識を取得していく場が、知床でなければならない理由が見つかりません。
現在も多くの学生が、知床のフィールドで学んで居ます。そして、この地域の人達と関わり合いながら、研究をしています。

大学を建設すること、作ることではなく、この地域の自然や産業、暮らしと専門性をもつ大学との連携をしっかり計っていく方が私はこの地にも学びの場にも必要な事だと思っています。そして、そうした環境をこれからも継続していくことに力を注ぐべきと考えています。
まだ、詳しくはないのですが、イメージとして総務省ですすめている「域学連携」という取り組みなどは、まさしくこれまで知床で取り組んできたことがベースになる、とても興味深いものです。

と言う事で・・自然大学。町の姿勢については、私は支持しています。

ただし、知床自然大学構想づくり協議会の策定した「知床自然大学構想(案)」を否定するものではなく、そこで協議された内容については、これまでの知床だから、知床をフィールドとすることがどれほど貴重ですばらしいことなのかを、改めて確認できました。
だから、なおさら、自然と言う枠に留まらず、自然をベースに展開する産業にも、観光にも、まちづくり全体にこれまで培ってきた大学や、研究機関との連携を強くしていくべきだと、私は思っています。
posted by あとむ at 12:43| Comment(4) | TrackBack(0) | まちづくり
この記事へのコメント
こんにちは
私は斜里町に住んでいますが、「知床自然大学院大学」という言葉を今回初めて耳にして驚いてます。町民が何も知らないのですから、「斜里町」が協力をできないのは当然だと思いますが、それにしても「知床自然大学院大学」とはどういうものなのか、どうして斜里町に作る必要があるのか疑問です。

開設資金は寄付に頼るそうですが、経営・運営は本当に大丈夫なのでしょうか。
また、寄付金を募るのであれば目的や目標額を示す必要があると思いますが、事業計画や予算計画はどうなっているのでしょう。
もし寄付金が目標額に達しなかった場合、既に集めた寄付金はどうするのでしょう。寄付金を受け取っておいて、「やっぱりできませんでした」では済まされません。
資金計画や事業計画が確実でないのに寄付金を集めることは問題です。知床100平方メートル運動も寄付金の扱いでは色々と苦労がありました。

私は、このような不確実な計画に町が関わらないのは当然だと思いますが、民間とは言え、このような構想が斜里町で進められていることに問題を感じます。
斜里町の信用やイメージにも関わることなので行政や議員の方々は慎重に対処していただきたいと思います。

尚、同大学設立財団のHPに、「斜里町の第3次総合計画(1986年)に構想が盛り込まれたのが出発点で、その後、第4次、第5次と引き継がれ、町職員を中心に検討されてきた」と書かれていますが、これは事実でしょうか。ちょうど1987年から20年間は午来昌元町長が町長をされていたときですが、議員の方々はご存知だったのでしょうか。
Posted by シルシル at 2013年03月21日 17:00
シルシルさん コメントをありがとうございます。

大学構想を初めてお知りになったと言うことですが、きっと北海道新聞の購読者ではないのですね。何度か新聞で取り上げられていました。
運営が大丈夫なのか、開校に当たっての資金は大丈夫なのかは、斜里町がとやかく言うことではないと思いますし、おっしゃることは、私も同じ考えです。

残念ながら、私が議会に入ったのは平成19年、村田町長の時です。その時に、総合計画の中にあるこの事業について、検討委員会のようなものを設置して検討をしてきたようです。途中で、講演なども開催し、印象に残っているのは「現実には非常にお金がかかり、自治体の規模での開校は難しい」というお話をされた先生もいらっしゃいました。
第3次総合計画の頃は、ちょうどとても好景気のころです。27年前になりますね。

計画に盛り込まれたと言っても、時代が違いすぎますから、町も検討結果の提言書を受けて、今は取り組む時ではないと判断したのだと思います。
27年前から議員をされていた方が、どなたなのか分かりませんが、職員だった方が議員をされています。
議会の中での議員各氏の意見は色々です、が、議会全体で協議されたものではありません。議会が結論を出したものでもありません。

私自身は、現状の中で、斜里町に大学の必要性は感じていませんし、なかなか現実的なものとして見えていませんので、詳しくもないのです。でも、正しい情報を知ることは必要ですので、もう少し調べてみます。
Posted by さくらい at 2013年03月22日 00:04
人類がしあわせな未来を創造するヒントはすでに2万年続いたと報告されている縄文時代に用意されていたと思います。その時代の頭蓋骨には、弥生時代に認められる殺戮の痕跡、矢じりで開けられた穴がありません。

 昨年、私は知床大学院大学設立セミナーに参加してきました。設立の発起人の一人、もと斜里町長午来さんは7000年前の縄文時代の文化が知床の地で発掘されたことの意義を語り、もう一人の発起人知床斜里町観光協会会長上野さんは人間を含めた生態系守るための研究、共生の展開の緊急性を説いた。

 生態系を守り人類の幸せな未来を創造するために、この大学建設構想の意義は大きいとおもいます。 世界自然遺産に登録されたこの地から、人類の未来に向けて多く優れた人材が羽ばたいていくことを切望します。
 知床自然大学院大学の入学資格が大卒者ばかりではなく、社会経験者など現場で活躍している人たちにも門戸を広げて欲しいです。創造力や問題解決能力が偏差値に必ずしも正比例し.ないという実態が研究報告にもあるし、社会の現場でも数多く確認されています。

 明治維新が必ずしも成功したとは言えませんが、粗末な建物ながらも、入塾条件にわけ隔てのない参加者全員でつくった松下村塾から多くの俊才が羽ばたいていった事実を忘れてはなりません。建物にお金をかけるのではなく、人材育成に労力を惜しまないことを願います。
 予算不足を理由にとん挫してはならない。必要な建物なら斜里町内に多少のリフォームで使えるものが多数存在する。
 僕の陶芸小屋も資金不足を補うため周囲の協力と廃物利用によって完成させていただきました。 生態系を大切にする思想を説得力を持って世界に向けて発信するためには、まずは自らの建造物や必要物品の徹底的リサイクルから始めて欲しいと思います。建物の外観ではなく、機能性を重視していただきたい。

専門知識、技術は必要です。ただしこれを人類の幸福のために役立てることができるのは偏差値の高さではなく、自然や人を愛せる感性や人格の豊かさです。北海道の生徒の学力が低いと嘆きの声がありますが、本当に必要な人間の能力はここにあるということを自然が大学を舞台に実証していただきたいと思います。

 かつて手作り職人大学の構想があり、日本繁栄のために必要な価値が正当に評価される時が来たと喜んでいたら、建設を巡る利権争い、汚職問題でとん挫したことは断腸の思いでした。知床自然大学は人類の未来に大きな役割を担っているだけに、くれぐれも二の舞にならぬことを願います。

 先般の斜里町議会で若者人口の減少改善が議題にあげられていました。雇用の確保による改善の努力は現在進行中であり、それなりの成果も認められるとのことでした。
 今後、この努力はより一層求められているところであり、農漁業など世襲制を頼りにした第一次産業だけに依存するのではなく、若者たちの能力と努力が正当に評価され、未来への見通しの中で生きがい、自信と誇りをもって働ける環境づくりが求められているのではないかと思います。
 そのためには、過去のしがらみにとらわれず、外部からの新しいアイディアをリアリズムをもって積極的に取り込んでいく姿勢が今後の斜里町の繁栄に必要不可欠ではないかと考えます。
 町議会の議題にもあがっていた、知床自然大学構想も、今一度斜里町民の心に火を灯すような形で取り組んでいただけるなら幸いです。そしてそのことで農漁業などの第一次産業を志す若者たちが知床自然大学で生態系について学び日本の未来の貴重な食料提供者として巣立っていかれることを望みます。
 
Posted by 田中英晴 at 2014年07月13日 09:48
田中さま
私のブログにコメントをいただきありがとうございます。

これからの斜里町を考える上で、大切ないくつもの言葉、あるいは方向性を示唆戴き感謝します。
知床自然大学構想は田中さまも出席されたとおっしゃっていらっしゃいます、設立財団で進められている計画です。
どのような形なのの科、どのような勉強を行うのかなどは、斜里町で検討はされていません。
しかし、知床というフィールドで展開される計画について、この方向や内容が明確になっていけば、斜里町も積極的に関わっていくことが、今回の第6次総合計画の中でも明記されています。また、こうした関わりは自然大学構想ばかりではなく、いくつもの大学と現在も行われている連携や協力でも実施されることです。
ぜひ、知床の生態系をはじめとした自然の活用が、これからの斜里町の新たな産業の魅力となることを私も願っています。田中さまのおっしゃられるように、知床の未来の貴重な食料提供者となるような、産業につなげられるような取り組みになると嬉しいですね。
コメントをありがとうございました。
Posted by さくらい at 2014年07月14日 14:28
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