降った雪を見ていて、まだ冬眠せずにウロウロしているヒグマが居たなら、足跡がくっきりついて、ヒグマ対策対応の人たちは少しは楽かも知れないと思いました。
野生のヒグマの動きを見定めるのは大変な作業です。まして、明るい時間ならばまだしも、暗いときには本当に大変です。逃げる、隠れる、移動する訳ですから、夜間の見極めは無理でしょう。
昨日、ウトロ地域にチラシが入りました。
10月から頻繁に市街地周辺に出没していたヒグマの対応状況を知らせるチラシです。この、チラシが折り込みで入ってから、数件の電話と、数件のメールをいただきました。「駆除されたとかされないとか、噂ばかりで本当のことが分からなかったので良かった」とか「市街地に頻繁って、そんなこと知らなかった」とか、「どうして駆除をしたのか」とか、「これだけ出没していたことを知らせなかったのはどうしてか」などの内容です。状況を知らせる対応に、評価はありましたが、同時に「もっと、事前にその都度、知らせるべきではないか」という声がほとんどです。
改めて、ヒグマの出没状況と危険性、対応について「知らせる」ことの難しさを考えてみます。
ウトロ地域は5年前にエゾシカ侵入防止柵を設置してから、エゾシカばかりでなくヒグマの侵入も減りました。それまでは、頻繁に市街地を通過したり、ウロウロしていたヒグマが減りました。しかし、今年の夏にウトロの漁港を泳いでやってきたヒグマをはじめ、今回、駆除されたヒグマのようにわざわざ市街地にやって来るヒグマが現れました。
こうしたヒグマの出没に対して、斜里町はその対応を知床財団に委託しています。知床財団は、このヒグマ対応をウトロ地域ばかりでなく、知床国立公園地域を羅臼までの広いエリアで対応しています。知床にヒグマは居ても当たり前ですが、そのヒグマが人との遭遇で事故を起こさないように対応するのが「対策、対応」の目的です。
今回のヒグマ対応については、先に書きましたように様々な意見や考え、要望を聞きました。
確かに、地域に発信された情報は少なかったと思います。
しかし、同時に、どのようにリアルタイムでその情報を発信することができるでしょう?
例えば、朝6時に姿を通学路で目撃されたとします。通報を受けて対応員が現地に着いたときには、移動しているでしょう。7時過ぎにはこどもたちの通学が始まりますが、その時点でヒグマはどこへ行ったのか?もしかしたら、柵の外に出たかも知れない、藪の中に入ったかも知れない、さらに違う通学路まで移動したかも知れない。その判断を現地で行う、そして通学路に対応員が張り付く・・
こうした対応を実際に行っているのですが、では、どの時点で、どのような広報を行うことが良いのでしょう?
広報車を出して、パトカーが走ってと言う対応を以前、行ったことがありますが、観光への影響も指摘され、まして移動する中で、どこが危険という広報は、ともすれば、大きなリスクを生じることになりました。
ヒグマの姿が見えていれば、対応も可能ですが、多くは「見えない、どこへ行った?」の状況です。
「ヒグマが出没しました」
「ヒグマは柵の外へ出ました」が理想的ですが、柵の外へと言う確認ができない状況では、なかなかその後の広報は難しいでしょう。
もしも、この時に「ヒグマが出没しています。気をつけてください」と広報や連絡網が入ったとして・・きっと、「どのへん?車で子どもを送った方が良いの?ここは、大丈夫?」という声が出るでしょう。でも、それらに応えるのは難しいでしょう。情報を受けた人は、一部で小さな混乱が生じるかも知れません。
さらに、広報をして、それを聴いた「ヒグマを見たい人、見てみたいと思った人」あるいは「カメラマン」は逆にその辺をウロウロするかも知れません。その対応はどうすればいいでしょう。
必要な情報は発信すべき。
問題は、その発信の方法、手段です。
これから、こうした情報発信の手段についても様々な立場からの検討が必要になります。どうすることが、この地域にとってベストなのか。それを、皆で探っていかなければなりません。
一つだけ言えることは、何をやっているのかヒグマ対応の方法を知ること、現状でどのように動いているのか知ること、地域に住む人たちの不安も知ること、地域でできることはなんなのかも考える事。いづれにしても、効果的な情報の発信を求めるには充分なコンセンサスが必要だと思います。

11月25日のチラシ表

11月25日のチラシ裏